舞台人は開業届を出すべき?個人事業主とフリーランスの違いは?

舞台人の多くは、雇用契約のある労働形態ではないため、いわゆるフリーランス状態であることが多いかと思います。
そこで気になるのが、開業届を出す必要があるかどうか。
メリットなどいくつかの情報をまとめつつ、解説してまいりたいと思います。

個人事業主とフリーランスの違いって?

そもそも個人事業主とフリーランスの違いは何でしょう?
結果から言えば、呼称の問題でほぼ一緒と言えます。
強いて言うならば、開業届を出しているかどうかの差です。
開業届を出していない場合、フリーランスと言えても、個人事業主とは言えないことになりますが、不法行為でなければ罰則があるわけでないので、何と言おうが自由です。

開業届は必ず出さないといけない?

そもそも舞台活動を仕事として始めた時、開業届を出さないといけないのでしょうか?
答えは、YES。
届け出る義務があります。

個人事業主は、活動し始めた日(正確には事業の開始等の事実があった日)から1ヶ月以内に、管轄の税務署と県税事務所に届け出ます。
出さなくて良い場合は、副業かつ、その副業の収入が事業として認められない場合のみです。
例えば、主な収入がアルバイトや会社に勤めていることで貰える給与所得で、舞台活動での収入が年間数万円程度しかないという場合は、開業届は不要です(確定申告とは別)。

ただ、ややこしいのが開業届は出さなくても罰則がないということと、青色申告が開業届がなくても適用できる場合があるということです。
そのため、青色申告できているので、開業届は今さら・・・というケースがあるのも事実です。

青色申告は開業届がないとできない?


では青色申告と開業届の関係はどうでしょうか。

一般的に個人事業主として開業する際は、「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出します。
(その他にもありますが、舞台人の場合は不要と想定して割愛いたします)
この二つを提出することで青色申告ができるようになるのですが、青色申告は青色申告承認申請書に基づきます

ここがポイントです。開業届ではなく青色申告承認申請書によって青色申告ができるのです。

開業届は、その年に青色申告ができるかどうかを判断するのに使われるだけで、青色申告承認申請書がなければ、そもそも青色申告ができません。
また、管轄の税務署や届け出る状況などによって、青色申告承認申請書だけ出すこともできてしまうため、開業届を出していなくても青色申告ができているという場合があるわけです。

個人事業主になるメリットは?

では、わざわざ開業届を出して個人事業主になるメリットは何でしょうか?
これは大きく分けて3つあります。
①青色申告
②屋号で銀行口座が開設できる
③国や自治体などの助成金・補助金を申請できる
以下に詳しく解説していきましょう。

①青色申告
先ほど開業届がなくても青色申告できる場合があると言いましたが、基本的には開業届が必要と考えておきべきでしょう。

確定申告は白色と青色の2種類あります。
白色申告との最も大きな違いは控除額で、青色申告の方が控除額が大きいため節税効果も大きくなります。

また、赤字を3年間繰り越せることもメリットの一つです。
例えば、昨年100万円の赤字で、今年200万円の黒字でも、昨年の赤字分を繰り越すことで100万円の黒字にできます。
年度毎に収入の変動が大きく変わることが見込まれる場合は、青色申告にする方が良いでしょう。
ただ、青色申告は帳簿管理が細かくなるので、会計ソフトのご利用をお勧めいたします。

②屋号で口座開設できる
芸名で活動していて、出演料を振り込んでもらうときに本名が出るのはちょっと・・・という場合は、屋号での口座がある方が良いでしょう。
また、舞台活動の収入を個人口座と切り分けることで、経理などお金の管理がしやすくなります。
マネーフォワード クラウド会計やFreeeなどのクラウド会計アプリは、口座と連携できるので、金額や内容を一々打ち込む必要がなくなり、経費の処理がとても簡単になります。
しかし、個人口座と連携してしまうと舞台活動と関係ない取引まで取り込んでしまうため、逆に処理が大変になってしまいます。
なお、口座名義人は、開業届に記載する屋号名と同じものになるので、開業届に記載する屋号名は、舞台活動を見越した名前にすることをお勧めいたします。

③国や自治体などの助成金・補助金を申請できる
個人事業主の場合、国や自治体による助成金・補助金の申請ができます。
例えば商工会議所・商工会による小規模事業者持続化補助金は、最大で50万円まで対象経費を助成してくれます。
各補助金にはそれぞれ目的があるので、その目的に沿っていれば申請が通る可能性は十分にあります。

その他の補助金で額の大きいものでは300万円というものもあり、事業として展開を考えていく場合は、個人事業主であることは必須と言えます。

開業届の提出方法

簡潔に言えば、税務署と県税事務所に行くだけです。
また、記入済みの届出書を持参していれば受付印をもらうだけなので、空いていれば一瞬で終わります。
が!この点でも補足が必要で、開業届を最もややこしくしています。

自治体によって違う開業届の出し方
例えば、東京都内であれば、開業届は税務署(国)と都税事務所(東京都)の2箇所に、それぞれの様式で届出書を作成する(合計4枚記入)必要があります。
しかし、お隣の神奈川県では、4枚綴りの複写式になった届出書があり、これを税務署、県税事務所、市(区)役所のいずれか1箇所に提出するだけ。
これだけで各機関が情報を連携してくれます。

開業届の様式は税務署としては全国すべて同じですが、県税事務所や市区町村単位では必要な情報が異なる場合があります。
同じ目的にも関わらず、違う様式で複数の機関に提出するのはとても大変です。
そこで神奈川県のように自治体によっては、一回の記入と提出で全て済ませられるように、税務署、県税事務所、市(区)役所が連携してくれているわけです。

【開業届サンプル】国税庁版と神奈川県版では記載様式に違いがあるのがわかる
開業届 国税庁版と神奈川県版

なお、市(区)役所と連携するのは住民税が絡むことがあるためですが、市(区)役所に開業届を出す必要があるかどうかは自治体によって違うので、市(区)役所に確認が必要です。

こうしたことから、提出方法が開業届を最もややこしくしていると言えます。

まずは税務署で確認するのが無難
前述した通り、開業届のメリットの一つは青色申告なので、青色申告承認申請書の提出先でもある税務署で確認するのが無難です。
そこで県税事務所や市(区)役所届出用を兼ねたものがあれば、その場で開業届出は完了します。

開業届に必要なもの

開業届に必要なものは以下の3点です。
・印鑑(三文判可・シャチハタ不可)
・マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知カード
・身分証(通知カードの場合のみ)
予め押印済みの開業届書を持参する場合は印鑑は不要ですが、訂正印が必要な場合などに備え、持参しておく方が無難です。

まとめ

舞台活動を始めるにあたり、基本的には開業届を出す必要がありますが、事業として収入が無い場合は不要です。
ただし、青色申告にしたい場合や、助成金・補助金を申請したい場合は、開業届を出しましょう。